environment園の環境

「子どもが主体」とは、どのようなことなのでしょう。主体というのは、「自分のすることは、自分が決める」「私の主人公は私」という感覚です。保育でいちばん大事なことは、子どもが自分の感情や意志を持ち、やりたいことを自分で決められること。おむつ替えひとつにしても、ただおむつを替えて貰うのではなく、毎回同じ手順でおこなうことで、子ども自らの意志でお尻を持ち上げたりします。「○○しなさい」では、子どもの主体性は育ちません。些細なことでも選択肢を与えることで、子どもは考え意志を持つことができます。

また、大きくなると遊びの中で、子ども自身が課題にぶつかり考え気づくことがでてきます。そこにも主体性が生まれてくると考えます。そのためには、豊かな環境が必要です。遊具や用具、素材。室内、園庭、園外。大人はいたずらと思うかも知れませんが、それは好奇心の表れ。この好奇心こそが自分で考えて行動する力の芽生えであり、主体性につながっていきます。やらせる、教える保育ではなく、子ども本来の力を信じ、待つ保育を実践します。

次に主体性を育むとは別の視点からの環境作りについてお話しします。まず園内、保育室内をご覧いただくと、シンプルな雰囲気がお分かりになると思います。よく、幼稚園、保育園で目にする壁面(色画用紙を使い、クマさん、ウサギさんなどが壁に大きく貼られているもの)。ルンビニあゆみ園では、それらのものはありません。何故、あゆみ園ではないのでしょうか。誰でもキャラクターや強い刺激を使えば、子どもを引き付けることができます。けれど、養護と教育の環境としては、原色やキャラクターにあふれた部屋はあまり好ましいとは思えません。子どもが絵本を読んだり、自分で遊びを創りだしたりするためには、強い刺激、カラフルな色彩や模様は、むしろ邪魔。原色があふれた集中しにくい環境のなかで、子どもたちは落ち着いて過ごせるでしょうか。子どもたちの豊かな感性を育むために、このような環境作りをおこなっています。

また、職員も環境のひとつ。職員自身が、子どもに与える影響は多大なもの。だからこそ、服装・所作・言葉遣い・声の大きさ…全てにおいて、職員が意識を持つように努めています。

参考資料 「環境構成の理論と実践 ~保育の専門性に基づいて~ 高山静子著 エイデル研究所」

「学びを支える保育環境づくり ~幼稚園・保育園・認定こども園の環境構成~高山静子著 小学館」

よく知られている一斉保育。クラス単位で担任が子どもたちを一斉に保育する。赤ちゃんの時から、みんなでご飯を食べ、みんなで排泄をおこない、みんなでお昼寝。しかし、ルンビニあゆみ園ではそのような保育はしません。自立へ向けてゆっくり歩みを進み始めたばかりで、生活リズムの個人差が大きい乳児に対して、特定の保育者が特定の子どもの育児(食事、排泄、睡眠など基本的な生活への援助)をします。もちろん一人ひとりの発達や生活のリズムに合わせるので、給食やお昼寝、おむつを交換する(排泄に誘う)タイミングが違います。また、決められた手順、決められた方法で毎日繰り返し過ごすことで、子ども自身が次の展開に見通しを持つことができ、さらに安心感が高まります。

同じ大人が同じ子どもの日常へ密接に関わるというご家庭では当たり前のことを実践するために、できる限り丁寧に保育し、子どもたちが安心して過ごせ、大人との愛着関係を形成していけるようにしていきたいと考えています。

給食時、食べている子もいれば、食べ終えて寝ている子、まだ遊んでいる子。それぞれが室内にいて、担当保育者は食事の介助をしつつ、寝ている子、遊んでいる子にも意識を向けています。そんなことができるのと思う保護者の方もあると思いますが、毎日の日課(生活の流れ)を繰り返し、安定してくると、0歳児でも見通しを持つことができ、不安が無くなります。普通の椅子に一人で座ることのできない子どもは、まだ椅子に座る体ができていないので、一人ひとり抱っこして食事をしています。

子どもは、目線が急に高くなるので、食事に集中できるよう、周りが気にならない配慮をしています。子どもの体の大きさに対して、椅子と机の高さが合っているか。足が床についているか。大きくなればスプーンの握り方。お箸に移行して良いか。保育者は、きちんと子どもの発達を見極め、一人ひとりに合わせた環境を考えています。

参考資料 「根っこを育てる乳児保育 ~育児担当保育が目指すもの~ 樋口正春著 特定非営利活動法人ちゃいるどネット大阪」

子どもたちの園生活で、ほとんどの時間を占めている「あそび」。この遊びの中に、社会に出るための全てが集約されているとあゆみ園では考えます。

さて、「あそび」とは、何だと思われますか。大人にとっての遊びとは、「現実から離れる」ためのもの(息抜き)ですが、子どもにとっての遊びは「現実に入る」ためのもの(学び)です。役割遊びなど、経験したことを遊びの中(自分の世界)に落とし、現実への想像力を伸ばしていきます。買い物に行ったことのない子どもには、お買い物ごっこは想像できません。ですから、様々な経験が必要となります。あゆみ園では知識や情報だけを教えるのではなく、環境に対して、子どもが想像し知恵を使って考える経験を大切にします。そのためには、子どもが主体的に行動することが必要であり、主体的に行動するためには、どこまで遊びこめるかが鍵となるのです。

経験をいろいろなかたちで表現したり、複雑なルールを守ったり。成長につれ、遊びの中身は驚くほど高度なものへと変化していきます。一人では難しいことも、友だちや仲間の力を借りてできるようになります。つまり「あそび」は、将来の集中力や創造力、協調性へと繋がる第一歩なのです。

ルンビニあゆみ園の「あそび」